EPIA EDENなんか目じゃないぞ!!

MB860で高性能静音サーバを作る

〔ハードウェア組立編〕

by ドッペルアルバイト (C) 18.Jul.2005


●はじめに.

初代の自宅サーバは、EPIA-C80A(800MHz)で作ったものの、居間に置く自宅サーバにしてはあまりにも音がうるさかったことから、二代目の自宅サーバは、CPUのクロックを533MHzに落としてまでも静かなサーバをめざすこととし、EPIA-E533 EDEN(533MHz)を使用し、回転数を落としたケースファン1基だけのほとんどファンレス並の静かさを実現した静音サーバを使用してきました。しかし、昨今の度重なるWindowsUPDATEやら、毎日のようなAntiVirusのファイル更新など、さすがにEDEN 533MHzではその耐えられない遅さに我慢ができなくなってしまいました。

2005年5月、重い腰を上げて、自宅サーバの更新を行うことにしました。そして、24時間稼働の居間用サーバとしては、とにかく音を静かにすること、つまり可能な限り本体はファンレスに近づけること。そして電源はACアダプタ使用がキーワードです。更に場所をとらないこと。当然、発熱の大きいPentium4/LGA775やAthlonは問題外。 こうなると選択肢はだんだん限られてきます。昨今の流れではPentiumMが最適かと思います。が、やはりいくつか難点も残ります。
 (1) 使用できるマザーボードとしてはmini-ATXの入手性が良いが、ATXケースが大きすぎる。CPUとマザーで4万円。静かなACアダプタが使えない。
 (2) LV-673など、mini-ITXのPentiumMマザーボードがあるが高価。CPUとマザーで7万円を越える。CPUの発熱は低温で魅力的。
 (3) 自作PCにはちょっと変わったものや実態不明の怪しいものを使ってみたい好奇心、いや、単なる普通の病気。
いろいろ考えた末、既存サーバのmini-ITXのケースとACアダプタを流用することを前提に、iBASE社の工業用マザーボード、MB860を使用することにしました。

このMB860は、Transmeta Efficeon (イフィシオン)プロセッサを使用した製品組込みなどに使用する工業用のMini-ITXマザーボードです。Transmetaといえば、モバイル用のCrusoe(クルーソー)プロセッサで有名ですが、このCrusoe後継のEfficeonは高性能・低消費電力を追求しながら、かつ冷却ファンが不要な今回の目的にピッタリのプロセッサ・アーキテクチャーを採用しています。MB860を販売している店舗も秋葉原で1〜2店、あとはコリン星で売っているという噂を聞く程度で、入手性は必ずしも良いとは言えませんが、Mini-ITXの省スペース性は居間用サーバとしてはとても魅力的です。

トランスメタ株式会社 http://www.transmeta.co.jp/     ・MB860製品情報 http://www.ibase-i.com.tw/mb860.htm

それにしても、このMB860というマザーボード、いざ使うとなると、なかなか情報が少なく、その実態がよくつかめません。「情報が無いならば、作って情報を提供してしまえ!!」ということで、5月のとある休日、秋葉原に出向いてさっそくMB860を調達してきました。例によって、ほとんどが写真の塊である我がホームページの特徴をそのまま生かし、特大サイズによる写真掲載により、とりあずこのページでは〔ハードウェア組立編〕としてご紹介し、ソフトウェアのインストールや環境設定については更めて気が向いた時に記述するつもりの第二部〔ソフトウェアインストール編〕で纏めてみたいと思います。

●MB860のキット構成.

MB860はmini-ITX規格で、マザーボードのサイズは17cm四方の正方形です。添付のCD-ROMと比べると、マザーボードの大きさがいかに小さいかがわかります。
キットの構成は、(1)マザーボード (2)ドライバCD-ROM (3)バックパネル (4)40Pin IDEケーブル (5)44Pin IDEケーブル (6)3COMポートケーブル (7)ユーザーズマニュアル の7点セットです。

キット構成はごく一般的な内容そのもの

●MB860を眺めよう.

どうですか、このマザーボード。mini-ITX規格は17cm四方ですから下の写真はほぼ実物大サイズです。

見てもわかりますが、やたらにピンやコネクタが多いです。工業用のマザーボードだけあって、RS232Cポートが4つ、Digital 4-IN/4-OUT、2CH-LVDS(Low Voltage Differential Signaling : テープドライブなどの接続用)、 う〜ん、まだまだ有ります。いろいなポート。さすが製品組込用!!

CPUはTransmeta Efficeon TM8600、動作クロックは1GHz (900MH〜1.2GHz変動)、メモリはDDR SO-DIMMを使用。サウスブリッジはAMIのM1563M、IDEポートは40Pinと44Pin。3.5インチHDDでも2.5インチHDDでも、どちらでもお好きな方をどうぞ。

まずは真上から。mini-ITX規格は17cm四方なので、これでほぼ実物大。
 
手前のソケットがメインメモリ用。ノートパソコンにごく一般的に使用するDDR SO-DIMMを使用。
その奥の大きなヒートシンクがCPU用。いちおうファンレス設計。使用する電源ソケットはATX20ピンのみ。
 
IOパネルも普通のパソコン並に充実。
しかし、基盤のコネクタにはさらに3CH-RS232Cポートや4CH-Digital I/O、2CH-LVDSなど、並のパソコン以上の機能が。

●mini-ITXケースを流用.

今まで使っていたmini-ITXケースを流用します。
電源は本体ケース付属の60WのACアダプタを使用しています。12Vの単一入力、基板上で12V/5V/3.3Vを生成し、ATX20Pinコネクタで電力を供給します。
自宅サーバは、マザーボードとHDDのみで運用し、光学ドライブなどは外付けにします。これで60WのACアダプタでも何とか間に合います。光学ドライブやオプションなどの周辺機が多く、電源が心もとない場合は、市販の80W以上のACアダプタに買い換えることをお薦めします。80WのACアダプタで約8000円程度します。更に大きな容量の120Wタイプなども有りますが、あまり容量が大きくなると、ACアダプタにもファンが付いてうるさくなったりします。光学ドライブは必要な時だけUSB接続で使用し、やはり「回り物「はなるべく少なくしたいと考えています。

W:295mm×D:270mm×H:64mm 厚めのノートパソコン並のケースです。
電源にACアダプタを使用するので、DC12VからATX各種コネクタに電圧変換する基盤を取り付けてあります。
 
市販のファンコントローラでケース内排気ファンの回転数を下げて静音化を行っています。

●メインメモリを取り付ける.

MB860ではノートパソコンで使用されるSO-DIMMを使用します。DDR動作が可能ですので、PC2700のSO-DIMMを購入しました。
いちばん安かったのがこれ。中身はそれなりに定評有るHYNIXチップでした。

裏面を見たら、HYNIXチップでした。

● 取り付ける時はコネクタの切り裂きに合わせて斜めに挿入します。

取り付ける時はコネクタの切り裂きに合わせて・・・
 
斜めに挿入。
 
そのまま押し倒します。ちゃんと入れば左右の切り裂きの部分が突起と合致します。
「突起は合っても写真のフォーカスが合っていない」というご指摘については、ご愛嬌ということで・・・ハイ。
 
MB860付属のバックパネルをケースに取り付けます。
実はLANとMIC入力の中間の穴が塞がれています。
ここにはVIDEO出力ピンコネクタが存在しますので、取り付け前に穴を開けておく必要が有ります。
マザーボードの取り付け時にコネクタがつっかえて判明しました。

●ハードディスクを取り付ける.

●次にハードディスクを取り付けます。
4R120L0は5400rpmの120GBハードディスク。秋葉原でもだいぶ見かけなくなってきました。
このハードディスクを使用する目的は、(1) 5400rpmの低回転による静音性と、(2) 120GBという最大容量からBigDriveでないためにレガシーDOSによる起動ディスクから全ての領域にアクセスが可能であることです。実際にはNTFSでフォーマットするため、レガシーDOSアクセスするには特別なツールが必要ですが、いざと言う時には127GB以下である方が有利です。

ケース付属の取付金具とハードディスクドライブ。今回はMAXTORのDiamondMax16 4R120L0を使用しました。

● いつものように、ハードディスクのジャンパをセットします。使用する台数は1台だけですので、ジャンパ位置はDS(Master)に設定します。

ジャンパ設定は、表面ラベルに記されています。
ご覧のようにデフォルト設定はCS(CableSelect)。1台しか取り付けないので、このままでも可。
基本的には左隣のマスター(DS)位置に付け替えることを推奨。

●電源を取り付ける.

● ところが、おっと、電源ケーブルが短い・・・。

ちょっとしたトラブル発生。

●ちょっとしたトラブルが発生してしまいました。ACアダプタ基盤からの20ピン電源コネクタがマザーボードの電源コネクタまで届きません。マザーボードの電源コネクタは以前のEPIAですと基盤と平行に横配置だったのですが、MB860では縦配置のため、もともとのACアダプタ付属の20ピン電源ケーブルでは届かないトラブルです。

横配置なら届くんだけれどなぁ・・・・

●20ピン電源ケーブルの延長コードを買ってきました。5cm程度で良いのですけれど、長いなぁ・・・

●うーん、いまいち。
やはり、mini−ITX規格では致命的な長さです。光学ドライブを搭載しないので何とかケースの中には収容できそうですが・・・。

なんだこりゃ・・・

●システムファンクションの設定.

●電源スイッチ/Power LED/リセットスイッチ/HDDランプのファンクション配線を行います。

  が、またしてもトラブル発生の予感が・・・!?

ファンクションコネクタもちゃんと接続できたように見えるが、実は・・・

●ファンクションジャンパは、左から〔1-2〕Powerスイッチ(緑)、〔3-4〕PowerLED(緑)、〔5-6〕HDDアクティブランプ(赤)、〔7-8〕リセットスイッチ(青)の設定です。いかにもちゃんと接続できているようですがこれはウソです。通常のATX規格では、〔1-2〕〔5-6〕〔7-8〕は隣同士の2ピンコネクタですが、〔3-4〕のPowerLEDのコネクタは通常、真ん中が空いた3ピンコネクタを使用しています。したがって、PowerLEDが点灯できません。
しかし、このような場合でも次の解決方法が有りました。

こんなのも売っていた・・・

● ご覧のようなピン配列の変換ケーブルが市販されています。これを使えば3ピンコネクタも1ピン2本で楽々接続できます。世の中、何とでもなるもんですねぇ。

●こんな感じで、無事、PowerLEDも接続できました。

● MB860は基本的にファンレス設計ですが、24時間稼働するため、気休めですがファンを取り付けました。このファンは40mm×40mm×10mm、定格回転数4800rpm、騒音値は何と18dBという超静音ファンです。毎分4800回転の高回転で回すものの、回転音は全くと言って良いほど聞こえません。静かです。

後日談ですが、このマザーボードは思ったより温度が高かったため、このファンは十分に活躍する機会を得ることになりました。

●超静音ファンを保険がわりに・・・

● ファンレス設計マザーですが、ちゃんとファン用電源コネクターが2個付いていますので、CPUファンとケースファンはマザーボードから直接、電源を取る事ができます。もちろんパルスセンサー対応ですので、ファンの回転数をシステムで把握する事もできます。

これはファンコントローラからのケースファン用

● ハードディスクを接続します。3.5インチHDDは40ピンのIDEポートへ。その右側には2.5インチHDD用の44ピンIDEポートを備えます。更なる静音化を目指すならば2.5インチHDDという選択肢もあります。また、PCIポートも空き1ポートを備えています。このマシンでは公開用LANポートのほか、ローカル用LANポートのDUAL-LAN構成とするため、PCIスロットにはLANカードを埋め込んでいます。

ハードディスクを接続していよいよ組み立ても終盤へ

● さすが!!工業用マザーボード。やるつもりになればご覧のようにRS-232Cポートを増設することも可能です。そこでモデムを4台繋げることにして・・・ ウソ
これは使わないのでさっさと撤収・・・。

RS-232C増設ポート。こんなに繋いでどうする?

●電源投入、起動、そして動いた・・・.

● 組み立てが終わり、ACアダプタから電源起動。何とか動いているようです。HDDはまだ区画のセットアップが終わっていないので、DISK BOOT FAILURE が出ています。この先までは進めませんのでテストはこれまで。

● 何とか動作しているようですので、これでハードウェアの作成は完了です。


 ここまでは単純に繋ぐ作業なので頭を使わない簡単な作業なのですが、問題はWindowsのインストールからサーバ用各種プログラム、セキュリティ対策と知的作業が続きます。この続きは第二部の「ソフトウェアインストール編」を作るかも。製作時にコンテンツ材料は残しているものの、作り終える時はもう次の世代の自宅サーバになっていたりして。
 実はもう既にMB860が飽きが来ていて、PentiumMを使った低発熱の静音自宅サーバを作りたい衝動に駆られています。このコンテンツを書いている間に、AopenからいよいよXC Cube MZ855-IIが発売になりました。こいつはMB860を購入する一週間前に、秋葉原で行われたAopenの展示会で見ましたが、それはmini-ITXとさほど変わらない小さな筐体で、その時点でデリバリー可能であればMB860に代わり即決でした。実際の市販価格もさほど高いものでなく、MB860と同じような値段でケース・電源込みで買えるならば、残念ながらこのコンテンツが書き上がった2005年7月の時点で、既にMB860を使用する価値はほとんど無くっています。
もしこのままコンテンツ第二部ができるようであればこの続き、また読んでくださいね。それでは・・・。

第二部 「ソフトウェアインストール編」 に続く (・・・のか?)

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